たかが階段、されど階段
突然ですが皆さん、「悪い意味で日本らしい家」ってどんなイメージですか? 筆者の場合……
玄関のドアを開けると、そこは狭い玄関。中にあがると、すぐ右側にお風呂場と洗面所があって、その隣には小さなトイレ。奥の部屋はリビングダイニングキッチンだが、その広さを重視した結果、収納に乏しい。玄関左には2階へと続く階段があり、狭く急である。左右には寝室と洋室。こちらも収納が少なく、限りある広さを有効に活用できていない。
というイメージ。これは都心で売られる一般的な建て売り住宅に見られがちな構造ですが、このように「もともと狭い平米をうまく活用できていない」「部屋数を多くした結果、無駄が生まれがち」「機能性を重視した結果、画一的になって個性のない家になる」などの、住心地の悪い間取りの家は少なくありません。
とくに、「狭くて急勾配の階段」は、悪い意味で日本の家らしい家の特徴のひとつと言えます。上記の例は直階段と呼ばれる種類の階段ですが、施工段階で工夫が凝らされていない家の場合、収納スペースを生み出せず、「ただ2階にあがるためだけの通路」になりがち。
また、いくら他のスペースが快適でも、階段から滑って転げ落ちて壁に激突し、穴を開けてしまった日には、100年の恋も冷めるものです。その一方でうん十年のローンは減らず、むしろ修繕費が飛んでいきますね……(笑) 設計段階では「1階と2階の移動に使うに過ぎない部分」と軽視されることもある階段なのですが、実際は「たかが階段、されど階段」。家全体のイメージ、雰囲気にじつは大きな影響を与えているのです。
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さて、前置きが長くなりましたが、このサイトを訪れた方々はきっと、そのような「悪い意味で日本らしい住宅」にあまり良いイメージを持っていない方がほとんどではないでしょうか? アジアンリゾート風の暮らしに憧れている方は、「ゆったり」「癒やし」「広々としたリビング」「南国リゾートのようなリラックス感」などの言葉に反応するはずで、そういう意味で言うと、日本における階段の扱われ方は、決して皆さんの理想に沿ったものでないことが多いのです。
しかし、家造りにおいて、階段は間取りに大きな影響を与えます。ということで、ここではその種類と特徴を、具体的なメリット・デメリットを交えながらみていきましょう。
階段が生活を左右する理由
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小さな敷地を有効活用することが求められる日本の住宅において、階段は非常に重要です。そこにどれだけ面積を割くかによって、部屋の広さが変わりますし、階段の形状によって収納スペースを設けることができるかが変わり、結果的に他の収納スペースの大きさも変動します。(例えば上のピンタレストのように、骨組みがむき出しになった階段は、オシャレで格好いいのですが収納スペースがありません。ちなみにこれは「ストリップ階段」などと呼ばれたりもします)
また、階段は生活動線に影響を与えるという点においても、暮らし方を大きく左右します。わかりやすくするため、2つの例を考えてみましょう。
玄関入ったところに階段を作るケース
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日本の建て売り住宅で見られる一般的なパターンですね。リビングを通らずに2階へ上がれるため、仕事で夜遅く帰ったときは他の家族を起こさずに済んで便利です。しかし、反抗期にさしかかった子供が家族と顔を合わせたくないために、帰宅するとすぐに自分の部屋に直行……のように、逆にデメリットになってしまうことも。
リビングに階段を設けたケース
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リビングを通って2階へと向かうため、家族が自然とそこに集うことになります。1階と2階の距離感が近くなるため、2階に家族がいてもその存在を感じやすいでしょう。しかし、ここはデメリットにもなり得るポイントで「2階の冷気が降りてきて暖房効率が悪い」「調理のニオイが2階に届きやすい」「子供の友人など、来客があったときに必然的に顔を合わせることになる」などの予期せぬイベントが起こることになります。
このように、階段によって生活のための導線は変わりますし、その結果、家での過ごし方も影響を受けます。どんなふうに家で過ごしたいのか、家族できっちりと話し合い、ビジョンを共有してから間取りを考えていくのが大事です。
階段の形状の種類は大きく分けて5つ
階段の形状には、大きく分けて「直階段」「かね折れ階段」「折り返し階段」「カーブ階段」「らせん階段」の5種類があります。
直階段(ちょくかいだん)
直階段は、上階と下階を一直線に結んでいる階段のこと。シンプルな構造のため、他の形状の階段と比べても低コストで仕上げることができます。その一方、一直線で折れ曲がることがないため、縦に長いスペースが必要になったり、落下してしまった際の危険性は高くなるなどの一面も。小さなお子さんや足腰が弱くなったときのことを考える必要もあるでしょう。
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ビジュアル的な話をすると、昔の古い一戸建てに多いイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。しかし、デザインをきちんとすれば、直階段でもオシャレに仕上げることも十分可能です。
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かね折れ階段
次にかね折れ階段ですが、これは階段が途中で90度折れ曲がる階段のことを指します。直階段のように一直線になっていないため、万が一落下しても、途中で止まることができます。ただ、折れ曲がっている分、大きな面積を必要とする一面も。
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もっとも、スペースを必要とする分、階段下に収納スペースを設けることもできます。ただ、階段下の収納スペースは斜めになっている分、他の収納スペースと比べるとやや使いづらい面も。後述する「リビング階段」の場合、本や観葉植物を置くことで”あえて見せる収納スペース”にすることも可能なので、住み始めたあとのことも考えるべきでしょう。この辺は直階段も同じですね。
折り返し階段
かね折れ階段が90度なら、180度くるっとまわるのが折返し階段。L字型ではなくU字型と言えばわかりやすいでしょうか。直階段、かね折れ階段と必要となるスペースが増えていったことから薄々感じている人もいるかもしれませんが、折り返し階段は「踊り場」が必要になるため、さらに広いスペースを使うことになります。
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その分、落下したときの安全度は増しますし、足腰の弱いお年寄りは踊り場で休憩することもできるため、デメリットばかりではないのですが、間取りに影響を与えることは頭に入れておくべきでしょう。
カーブ階段
カーブ階段は、文字通りカーブを描きながら2階へつながるタイプの階段のこと。自由度の高いデザインにすることができ、また、直階段よりも小さいスペースで設置することができることもメリットです。
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ただ、アンティークな洋館風の家にはマッチするものの、アジアンテイストなバリ風住宅とはそこまでマッチしないかもしれません。他の種類の形状にしたうえで、黒くてシックな色合いの階段でぱきっと決めるか、逆に淡い白色の階段にして部屋全体のアクセントにするほうが雰囲気は合いそうです。また、収納スペースとして活用するのがなかなか難しい面もあります。
らせん階段
これは多くの人がイメージできるでしょう。階段がDNAのようにらせん状となって2階に続いていくのがらせん階段です。海外ドラマに出てくるものをイメージすると、とても広いスペースを使いそうと思う人もいるかもしれませんが、それは海外のお話。日本の住宅でらせん階段を取り入れると、すべての形状の階段のなかでもっとも狭いスペースで造ることができます。
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また、デザイン的にも非常にオシャレなので、リビングに設置することで、それ自体にインテリア的な意味合いをもたせることができます。
このように、一見メリットしかなさそうならせん階段ですが、デメリットもいくつか。たとえばその値段。直階段だと20万円前後なのに対し、らせん階段だと40万円から。そこに転落防止の加工を施すと60万円程度まで跳ね上がります。40万円あれば冷蔵庫と乾燥機つき洗濯機が購入できるわけです。また、ステップが三角形になるため、足を踏み外しやすくなるという面も。慣れないうちは、夜に階段を降りる際に危険です。さらに、階段の空間が狭いため、2階に大きな家具を搬入するのが難しいというデメリットも。2階をどんな空間にするかによって、判断が変わってきそうですね。
デメリットを書き連ねてきましたが、面倒なものにこそ愛着を感じる人がいるのも事実。短所を味と捉えることができれば、暮らして楽しい見ても楽しい、そんな家になることでしょう。
アジアンリゾート風住宅に合うのは?
上記を総合的に判断すると、オススメの形状は直階段、かね折れ階段、らせん階段の3つ。そして、リビングに設置するのが圧倒的にオススメです。
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理由は単純で、そのほうが「悪い意味での日本の建て売り住宅っぽさがなくなる」から。リビングに階段を設置すれば、自然と建て売り住宅っぽさがなくなり、『テラスハウス』のようなオシャレさを醸し出すことができます。また、同時に部屋数を絞ることも重要です。こうすることで自然とリビングが大きくなって、開放的な雰囲気になりますし、2階とのつながりを強く感じられるようになるので、視覚的にもかなり余裕を感じられるようになります。
家づくりからバリ島リゾート風にしたい方は…
とはいえ、子育て中の家族など、家庭の状況によって最適な間取りは変わるもの。どのようにすれば南国リゾート感のある家にできるのか、その前提を踏まえたうえで、自分たちの生活に合うように専門家とすり合わせしていくのが大事でしょう。
もし、イチからプロと綿密な打ち合わせをしたいとお考えの方は、ぜひ共栄コーポレーション(YAMADAホームズ販売協力店)にお声がけください。当社では外構工事も一貫してお手伝いしており、全体イメージのすり合わせから階段に関する細かい質問まで、気軽にご相談いただけますよ。
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